H20年度は、H19年度に提案した錐制約部分空間法を非線形へと拡張し、「カーネル錐制約部分空間法」を提案した。通常の錐は線形ベクトル空間内で定義されるが、これはカーネル法を用いることにより非線形空間内で錐を定義している。錐による識別はベクトルの内積に基づいており、この内積はカーネル法との相性が良いことから、カーネル法を用いた非線形錐へと自然に拡張できる。本提案手法を顔及び人検出の実験に適用し、非線形部分空間法などと比較することでその有効性を確認することができた。しかしながら、線形錐からカーネル錐への性能向上は期待された程は得られず、選ぶカーネルによっては性能が低下することも確認した。この結果は逆に、通常の線形錐が特徴空間の本質的な構造であり、その構造を考慮することで線形でも十分な性能が得られることを示しており、興味深い知見である。 次に、H19年度に提案したクラスタリング手法(vMF Mean Shift法)も同様に非線形へと拡張し、kernel vMF Mean Shift法を提案した。これは非線形(カーネル)空間内の超球面上でのサンプルのクラスタリグを行う手法である。vMF分布がベクトルの内積のみで表現されることから、本提案手法はkernel法を用いているにもかかわらず簡易なアルゴリズムとして実装することができる。さらに、カーネル行列にサンプル間での類似度行列を用いることで、類似度によるクラスタリングにも適用可能である。 最後に、H19年度に提案した錐制約部分空間法を基板の外観検査(異常検知)に適用し、その検査性能の高さとパラメータヘの非依存性も確認した。
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