研究概要 |
ロボットにおける聴覚能を考える際, ロボット自身の持つダイナミクスが重要である. このことはヒトにおける動的な聴環境が定位能を改善することからも示唆されている. しかしながら, ロボットの機械的ダイナミクスは非線形で高次であるため, 必ずしも望ましい特性だけが得られるとは限らない. 本年度は研究目的に掲げたもののうち, 特にロボット自身のダイナミクスにまず注目することとした. これは, 不確かさの中でも改善の寄与の大きな部分と考えられ, 得られる効果が大きいと判断されるからである. 具体的には, ロボット聴覚におけるダイナミクスにおいて, 特に身体の動作制御の観点から不確かなダイナミクスのある場合においても, 聴覚(ここでは音源定位)性能を保証するアプローチについて, 適応制御の立場から検証した. 昨年までに分かつてきた聴覚ロボット(頭部)の特性を調べたところ, ロボット頭部のダイナミクス(の線形化したもの)が概強正実であることが示されていた. これを利用して, 単純適応制御のアプローチをとることでオーディオサーボ系が構成できることを指摘し, 実際の実機実験によって従来法に比べ性能が改善することが示された. さらに, バイノーラルな聴覚ロボットの聴覚特性モデルを詳細に検討したところ, 非正規分布に従うことが分かり, このモデルを使うことで, 動的な音源定位においてその性能が改善することを示した. また, ロボットの動作に伴う変動や環境内の変動への対策として確率的勾配法による音源定位手法についても検討し, この適用例として車輪移動型小型聴覚プラットフォームを試作した. この手法により, 音源位置を直接推定しなくとも認識率の良い受聴点を探索することが可能であることが実験的に示された.
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