研究概要 |
本研究は被験者実験と動物実験を平行して行うことでそれぞれの長所と弱点を補完し、音刺激によりヒトがやすらぐ時の脳機能メカニズムを生物学的基盤に立ったデータからの解明を目指すもので、先例が殆ど無く新しい方法論を必要とする。そのため、本年度は神経科学と感性科学の両面の先行研究を参考に適切な実験方法の確立から研究を行った。文献研究や国内および国際学会で収集した情報をもとに、音を呈示した被験者に対する光トポグラフィー計測や自律神経反応計測を行う方法と動物に音を聞かせる標準的な設備や装置の構造、音刺激提示方法を検討し実験を行った。やすらぎを与える効果のある音の特徴をスクリーニングすることを目的に、リズムとその変化の周期性に着目して呈示音源を選択した。アイマスクで視覚刺激を遮断した被験者に密閉型ヘッドフォンからホワイトノイズ、小川のせせらぎ、ストップウォッチ、鋸で板を切る音、時計の秒針、波、Mozart K448第一楽章、打ち上げ花火の順に呈示して光トポグラフィーと自律神経反応のリアルタイム計測を行ったところ、Mozart K448, 波、川のせせらぎを聞いている間、前頭葉の酸素ヘモグロビン量の変動が少ない傾向が見られ、これらの音では実験後に行った呈示音に対する印象評価アンケートでも気分がよいと評価された。一方、ストップウォッチ、時計の秒針では前頭葉の酸素ヘモグロビン量の変動が大きく、気分が良くないと印象評価された。このことは脳の生理指標と印象評価が相関していることを示す。この結果を受けて、神経科学的に標準となる方法でホワイトノイズ、Mozart K448、小川のせせらぎを呈示したマウスの脳ホモジェネート抽出標本を用いて、HPLC法で情動や気分の変動に深く関わるとされるモノアミン濃度を測定し、音呈示をしなかったマウスのものと比較する実験を行った。この実験結果にっいては現在解析中である
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