本年度の実験動物を使った実験では、前年度のマウスを平常環境下において1週間聴覚刺激を与えたときにセロトニンの増加がみられた音刺激とモーツァルトの音楽に着目した。マウス視床下部でのc-fos発現は急性ストレスにさらしたときに起こる反応として知られているが、特に拘束ストレスなどのマイルドストレスでも引き起こされることが知られている。そこで、30分間の拘束を与える間、マウスに音刺激提示なし、ホワイトノイズ、モーツァルトの音楽(K448)を提示した。刺激開始後2時間でマウスを灌流固定して視床下部でのc-fos発現を解析したところ、モーツァルトの音楽提示群で視床下部室傍核でのc-fos発現が高くなり、White noise提示群では低かった。この結果は前年度の実験でモーツァルトの音楽提示群で脳内ノルアドレナリン濃度が高くなっていたこととWhite noise提示群で脳内セロトニン量が高くなっていたこととの相関が考えられる。また、ヒト被験者実験ではこれまでに行っていた実験が、アイマスクをつけた上でヘッドフォンからの音提示であったため、通常の生活環境とかけ離れた状態でデータ収集をしていたことを踏まえ、新たに利用できるようになった防音実験室でのサラウンドスピーカーによる音提示実験を行った。これまでの実験で、モーツァルトの音楽が驚愕・恐怖反応を引き起こしている可能性があることから、音楽刺激として雅楽を加えて実験を行った。その結果については現在解析中である。
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