研究概要 |
任意面映像提示を実現するために,壁面を映像提示用ディスプレイとして利用することを試みた.壁面への映像提示では,スクリーンへの映像提示とは異なり,そのまま映像を提示すると元々の映像とは異なった明るさや色合いの映像が投影される.そこで本研究では,プロジェクタの応答特性と配光特性,壁面の反射特性の考慮に加えて,人間の感性特性に着目して,投影映像が入力映像の印象と近い印象を与えられる輝度補正アルゴリズムを提案した. まず,実際に室内環境を模した実験環境を構築し,一様な室内用クロスを貼り付けた壁面から,レンガ壁を模した室内壁面まで,様々な状況を再現できるようにした.そして,この実験環境を用いて,本輝度補正アルゴリズムにより補正された映像を投影し,壁面の反射特性の違いによる影響と本輝度補正アルゴリズムの効果を検証した.その結果,投影映像に生じるクリッピングエラーの割合と映像の印象には関連性があることがわかり,この関連性に基づき違和感のない程度までクリッピングエラーを許容して補正結果を調整することで,壁面の影響を消せただけではなく,補正後の投影映像の印象を入力画像の印象に近づけることができた.しかしながら,本輝度補正アルゴリズムの更なる改良として,本輝度補正アルゴリズムに必要なパラメータの最適値の自動選定や,投影映像の印象により強く影響を与える感性因子の抽出,さらに得られた因子情報の本輝度補正アルゴリズムへの応用等を検討していく必要がある.
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