本研究課題では、音声をはじめとする外部刺激が人間の心理・生体にどのように影響するかを調べ、それらを解析することにより、人間の感じる心地よさを定量化する.ここでは、脳波、心拍変動、呼吸、皮膚電位、眼球運動、脈波伝播速度などの生体情報と人間の感性との関係を明確にする.獲得した生体情報と被験者の心理状態を、ニューラルネットワークを用いてコンピュータ上にモデル化することにより、様々な外部刺激が、どのような精神状態に誘導するのかを解明し、バーチャルセラピストとしてシステムを構築する. 現段階では、被験者に聞かせる音刺激、またそれらから引き起こされる感性情報「澄んだ-濁った」、「迫力のある-物足りない」、「金属的な-柔らかな」などを選定している.また、50名ほどのデータを収集する予定であったが、脳波アンプの導入が遅れ10名程度のデータしか獲得できていない.来年度バーチャルセラピストのシステムを完成させるために、H20年度6月までに早急にデータを採取する予定である.また、10名の獲得した生体情報と感性評価の関係は、部分的には解明しているものの、引き続き解析が必要である. これまでの成果としては、ニューラルネットワークを用いて人間の感じ方をモデル化することに関して「動的ニューラルネットワークを用いた人間の明順応モデル」(文献1)を発表している.また、「ニューラルネットワークを用いたボタン音印象評価モデル」(文献2)においては、ボタンを押す音とその印象との関係をモデル化可能であることを示し、ウェーブレット変換による音声情報のパラメータを修正することにより、様々な印象のボタン音を構築できることを確認した.これらのことから、平成20年度において、生体情報と心地よさの関係もニューラルネットワークを用いて実現できると考えられる.
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