研究概要 |
2002年5月, S.Wolframは著書「A New Kind of Science」を出版し, 世界の注目を集めた.この著書で述べられているWolframの理論は, 「自然界で複雑と見える現象は全て, 単純な法則に基づく計算の繰り返しによって成り立っている.」というものであり, 物理学や生物学, 工学から経済学に至るまで, あらゆる分野でその基本原理の再検討をせまるものである. Wolframの理論の基礎をなすものがセルオートマトンであり, 言い換えれば, 「自然界で複雑と見える現象は全て, セルオートマトンでシミュレーション可能である.」ということになる. 本研究では, 物理現象の一つである雪の結晶に注目し, 雪の結晶成長シミュレーションにおけるセルオートマトンの遷移関数の物理的な意味を解明することを目的としている. 今までの雪の結晶成長シミュレーションは2次元セルオートマトンを用いているが, 実際の雪の結晶は一見2次元的な構造をしていても実際には3次元な構造を持っている.これより, セルオートマトンの遷移関数の物理的な意味を解明するために3次元モデルを構築しシミュレーションを行った.その結果, 3次元的な結晶である針や角柱といった結晶の類似パターン生成に成功した. 3次元モデルのシミュレートから得られたデータを分析しているが、セルオートマトンの遷移関数の持つ物理的な意味を明らかにするには至っていない.今後も解析を続けることでWolframの理論の正しさを証明する1つの突破口となりうると考えられる.
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