研究概要 |
本研究課題は, 超複素数の一つである四元数をニューラルネットワーク(NN)に導入することにより構成される四元数NNについて, その基礎理論の展開ならびに工学応用への適用を目的とするものである. この研究課題は, (1)階層型四元数NNの実時間画像処理への応用, (2)相互結合型四元数NNによる連想記憶システムの特性解析, (3)他構造を持つ四元数NNの提案, の3つより構成されている. 平成20年度については, 相互結合型四元数NNによる連想記憶システムについて, より自由度の高い連想記憶システムの設計・構築を行った. この課題は上記の(2)に対応するものである. 従来において本研究申請者が提案・解析してきた連想記憶システムは離散状態・離散時間により動作する相互結合型NNであり, これは各ニューロンにおける各四元数成分が±1の値のみを取るシステムまたは-1〜+1の範囲の実数値を取るシステムであった. これらのシステムでは四元数における直交座標表現を用いていた. 平成20年度に検討を行った連想記憶システムでは, 四元数の極座標表現を導入したニューロンモデルを提案し, 1つのニューロンの値を3つの実数値角度により表現することが可能となった. さらに, ネットワークが安定して動作する条件について解析的に算出を行った. この表現により, この相互結合型四元数NNによるカラー画像の取り扱いが容易となることが期待できる. これらの研究成果は, Int. Conf. on Soft Computing and Intelligent Systems and Int. Conf. on advanced Intelligent Systems(SCIS&ISIS2008)ならびに計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会において発表を行った。現在, 論文投稿に向けた準備として, このネットワークにおけるパターン記銘方法の確立や記銘パターン数・入力パターンの変化による想起能力の変化についての検討を行っている.
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