近年、群知能の研究が盛んになってきており蟻のフェロモン・コミュニケーションに関しても、メカニズムの探求やその工学的応用が試みられている。本研究は、蟻のフェロモン・コミュニケーションのメカニズムを様々な実問題の解決に利用するための知見を得ることを目的としており、具体的な目的として、1)二人零和有限確定完全情報ゲームへの応用と2)群ロボットの行動制御への応用を目指している。本年度の研究内容を以下に示す。 1) について : 前年度に作成した、将棋の局面と勝敗の関連をフェロモンライクな情報として格納するフェロモン・データベースと指し手を生成するエージェントを利用して、エージェントの進化にかかわる様々なパラメータ(フェロモンの蒸発率等)の有効性に関する実験を行った。この結果、将棋のような局面が膨大になる状況ではフェロモン・コミュニケーションよる探索の効果は限定的であるが、定跡構築等には適用し得るといったことがわかった。 2) について : 前年度に構築した、電磁誘導方式液晶タブレットと小型ロボットを用いるフェロモン・コミュニケーションに基づいた群ロボットシステムを用いて、蟻の採餌行動を模した実験をさまざまなパラメータ設定のもとで行った。この結果に基づき、実ロボットにおける進化的なフェロモン・コミュニケーションの設計について検討した。さらに、このシステムを複雑系教育に利用するため、デバイスの改良やコンテンツの作成を行った。
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