研究概要 |
本研究では,物理的および電子的情報源が混在した情報環境における利用者の情報探索行動の特性を明らかにすることを目的に,大学図書館において実証的な実験を行った. 実験では,図書館内での情報探索行動を(1)眼球運動測定,(2)Web操作ログ,(3)発話プロトコル,(4)事後インタビューにより記録した.被験者には,「地球温暖化の議論についてまとめる」というレポート課題が与えられ,レポート執筆の準備のための資料収集が求められた.なお,実際にはレポートは作成せず,資料収集までが実験であることについては,実験終了時まで伏せられていた. 実験の結果,被験者らは情報探索における重要度として,「手軽さ」や「早さ」を上位に挙げる傾向にあり,その結果として,Webにおける情報探索を「手軽」で「便利」なものだと感じていることが明らかとなった.Webを用いた情報探索においては,ブラウザの「戻る」機能が頻繁に用いられ,起点となるページを中心とした行きつ戻りつの探索が行われていた.また,眼球運動の分析からは,Webページを読む際に,マウスカーソルを「しおり」的に用いていることが明らかとなった. 一方,物理的な情報源である関連する図書を探索する際には,最初にOPACを用いた図書検索が行われ,館内地図情報から配架位置の把握が事前になされていた.しかしながら,その後の館内での移動経路および眼球運動の分析から,書架の脇に示されている館内表示に頻繁に視線を向けながら,目的の書架を探す行動が認められた. 本研究の結果から,物理的および電子的情報源が混在した環境においては,利用者は主に,「手軽さ」や「利便性」の点からWebを多用する傾向にあることが示された.一方,図書館内での図書の探索の分析からは,目的の図書に導くためのナビゲーションを如何に改善するかが,今後の課題であることが明らかとなった.
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