大学等の高等教育機関において教育の質の向上が求められてきている。これに伴い、大学の教育プログラムはより厳格化し、落とした単位を留年せずに取り戻すことが不可能となるケースも多く発生する。そのような学生を自己責任で切り捨てるのは容易であるが、修学支援の観点から「何らかの手段」で「落とさせないようにする」ような支援が求められている。本研究では、学生の取得済単位と現時点での履修状況等を知識として持ち、履修計画の立案及び履修中の科目を修得できなかった場合のリスクを予測し、履修計画の再計画を行い、回避不能の可能性の警告等の対応や、現在履修している当該科目の担当教員に対して指導依頼を行う修学支援エージェントを開発する。これにより、学生自身が単位を落とす前に落とした場合に予想されるリスクを把握し、事前に的確な対応を取れる様な修学環境の実現を目指している。これまでの成果として、所属機関の現行システムにおける成績管理データベース及び科目情報データベースの仕様に合わせた同様の実験用データベースを実装し、さらに学則で定められる進級要件、卒業要件などのルールベースを実装した。そしてこれらの情報を用いて個々の学生の修学状態を把握し、適切なアドバイスを行う支援エージェントの開発を行った。具体的な機能として、(1)学生の単位取得状況等に基づき学生の修学状況を把握する機能、(2)修学状況に基づき、今後の修学計画を立案する機能、(3)現在履修中の科目を含めたリスク計算を行う機能について実装を行った。また、本支援エージェントの試験運用環境として学内Webネットワーク上で利用できるシステムとして利用インタフェースを開発し、評価実験を行う環境を整備した。
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