本研究では、北西ケニアにおけるモバイルメディアの普及とその影響による社会変容に関する実証的調査をおこなっている。全世界的に携帯電話の利用はいまだに拡大している。2000年以降の普及拡大の大きな要因はアフリカ地域におけるネットワークの拡大にある。調査者のフィールド、トゥルカナは、無文字文化であり、電気やガス、水道といったインフラのない場所で牧畜をおこなって生活をしている人びとが多くいる。こういった場所においても、携帯電話やインターネットの利用は、可能となりつつある。これは、活版印刷以来の社会変容を促す可能性がある。 2008年度は、この状況のより詳細なデータを収集するために、インタビュー調査と資料調査をおこなった。また、援助団体であるPANOSでメディア利用とケニアとの関係についてヒアリングをおこなった。この成果から、牧畜社会の携帯電話利用は、貧困や闘争などの局面において重要な役割を果たすことがわかった。また、トゥルカナのコミュニケーション文化、「ねだり」が、対面的コミュニケーションにおける約束履行可能性に支えられていたことを考えあわせるならば、リモート・コミュニケーションにおいて、強化されていることが確認されている。このような互助ネットワークを利用した社会秩序の再編について、調査研究する必要と新たな仮説の提出を次年度の課題としている。
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