研究概要 |
平成20年度は, デザイン学習支援システムを完成させ, システムの効果を評価する実験を実施した. 構築されたシステムは, 事例に基づく平面構成を課題とする. 学習者に提示する事例と学習者の作品との類似度から, 学習者の観点を推定する. 類似度の計算におけるパラメータは, 学習者による主体的な調整が可能なものとした. 学習者は, システムを用いることで, 事例に基づく平面構成における自身の観点をリフレクションする. 計算機により推定される観点の参照により, 学習者の暗黙的観点が客観化され, 多様な観点を探索するスキルが身につくと期待される. なお, システムにおけるパラメータの設定, 類似計算の手法は, 認知科学における類推の計算機モデル研究に従うものであった. 構築されたシステムは, プレーポストデザインの実験にて評価された. 被験者に事例に基づく平面構成を2回行なわせ, その間でシステムを試用したリフレクションを行なわせた. システムの効果を検討する指標として, 被験者の制作した作品に対する被験者自身による自己評定を採用した. 結果, システムの使用により, 被験者の自己評定が向上することが確かめられた. また, リフレクションにおけるシステムの使用状況(ログ)と自己評定との関連を検討した結果, 計算された類似度の種類と自己評定の向上とに有意な相関が観察された. 自己評定の向上に寄与した類似度は, 事例と作品との関係構造の対応を計算するものであった. この結果は, 類推の研究において指摘される構造的類似の重要性と一貫する. 本研究の意義は, 認知科学における類推研究の知見をデザイン学習に応用し, それをシステムとして実現したことにある. その効果をより高めること, システムの効果を客観的に評価することは, 今後の検討課題である.
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