研究概要 |
本研究課題では脳の視覚系の図地分離のプロセスを中心とした形態情報処理システムのコンピュータによる自動的なモデル生成による分析を目指して取り組んでいる.モデリングに際し解空間を狭めるべく制約条件を課すことは生成されるモデルの精密さの観点からも,またモデル生成の計算効率の観点からも非常に重要である.平成19年度は主としてモデリングの制約条件となる,図地分離に関わる心理物理的な知見の獲得のための研究に取り組んだ.図地分離は輪郭統合との間にインタラクティブな関係を有するとの先行研究の知見に関して,共線的に配置されるガボールパッチのコントラスト検出閾の低下の現象との関連を調べた.その結果,両者には大きな関連は見られないことがわかった.一方で図としての性質を有する局所パターン群の輪郭同士を統合することにより生じる大域的な閉曲線の知覚のし易さについて心理物理的に調べたところ,局所的なパターンの図方向と大域的な閉曲線の図方向とが一致している場合に大域的輪郭が知覚し易く,相反する場合には知覚が困難であることがわかり,局所的・大域的図方向情報の間には相互作用があることが示唆された.また,2次元面像を元に図地解釈が成立している際には図として解釈される物体が3次元的な構造を伴った物体として知覚されると考えられる.その構造について立体視システムを用い比較的凝集性の高い各種閉曲線により調べた結果,物体中心から垂体状に奥行変化する表面が知覚される傾向が見られた.これらの知見を踏まえた図地知覚の情報処理のモデル生成のための制約条件の与え方について検討を進めている.また,同年度には神経回路モデルの自動生成を行う並列計算用ハードウェアを導入し,このシステムを効率良く稼動させるソフトウェア構成及び計算アルゴリズムについて検討した.これらの結果を基に次年度に展開してゆく予定である.
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