研究概要 |
平成20年度は, 主に映像解析による非言語行動の分析, および生理指標の解析の観点から, 対話の拡散収束のプロセスに関する検討を行った. 平成19年度は, 「ストップ」を収束的局面, 「ゴー」を拡散的局面に対応させたストップ・アンド・ゴー・ブレインストーミング法を用いた対話を分析したが, 平成20年度はより自然な対話場面を検討するために, 対話者が自由に発想を行う問題解決対話を行わせた. また対話参加者以外による対話評価実験を行い, 対話の様々な局面について客観的に評価させた. 以上の検討の結果, 対話の拡散収束局面と身体動作の大きさに関係があることが見出された. 両者が拡散的な思考を行っている際は体の動きが大きく, 一方収束的な側面では体の動きが小さくなっていたことが示された. しかしながら, 対話者同士の身体動作の関係と, 対話の成否や質的な側面との関係はいまだ不明確なままで, 次年度の課題として残った. また生理指標による解析の結果, 平成19年度に行った実験結果同様, 交感・副交感神経活動が対話の局面と密接に対応することが示唆された. また, 平成20年度は, 対話の拡散収束局面を両者が共有する上で非常に重要だと考えられる対話における主導権の解析を行った. 映像解析の結果, 対話における主導権の交替・移動と対話者の身体動作の同調性に密接な関係があり, 対話において主導権を持つ対話者の交替が起こる際, それに先立ち, 両者の身体動作の同調傾向がみられることが明らかになった. またこのとき単に身体動作が同期するわけではなく, これから主導権を握る対話者の身体動作がもう一方の対話者の動作に若干先行することが示された.
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