研究概要 |
注視点と視線走査を統制した表情認知課題の結果はMEG研究による顔認知時の潜時と類似し,本研究の有用性と本手法による脳活動検討の妥当性を示す【19年度研究成果以前】. 提案した表情認知モデルに対し,より妥当な表情認知時間の計測と表情認知モデルの再検討を研究目的とする. 本年度は第1段階として,注視点計測システムを導入し視線移動時間の傾きにおける個人差を低減する.信頼性を高めた視線走査統制による表情認知実験の結果から,より妥当な表情認知モデルを検討する. 得られた成果は以下の通りである. 1.非接触・無拘束型注視点座標検出システムを導入し,被験者の実験時のストレスを軽減した誘導型視線走査統制課題における訓練終了判定システムと表情認知課題遂行監視システムを構築した.また,本実験システムでは視線移動時間における個人差を低減した. 2.構築したシステムにより認知実験を行い,実験結果を解析し表情認知モデルの再検討を行った.現段階における表情認知モデルは以下の特徴を持つ. (1)非注意的な表情認知を伴う人物同定処理において,これまでのHaxbyモデルに従い上側頭溝と両側紡錘状回の相互活動がある. (2)同上の処理における嫌悪表情認知時の処理過程として,扁桃体・島領域への情報の経由,その後発生する上側頭溝と両側紡錘状回との連携による人物同定の完遂が示唆される. 本成果より,Haxbyモデルと共にLeDoux Circuitにも着目したモデルの再検討を進める必要性が得られた.また,各表情課題の難易度の均一性についても検討する.表情認知課題の結果に対し,各表情課題の難易度による調整を反映させるために倒立顔表情刺激を用いることで解決を図る.
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