研究概要 |
まずは、顔の動きを知覚する場合に、輪郭やパーツはどれくらい影響を及ぼしているのかを調べた。(1)CDL:模式的な顔(輪郭、目、口)の中で目の部分が動く刺激。(2)CD:CDLより口を取り除いた刺激。(3)DL:CDLより輪郭を取り除いた刺激。(4)D:CDLより輪郭と口を除いた刺激。顔の動きを提示後に見られた誘発脳磁場より活動源を推定したところ、ヒトの運動視中枢に相当する後頭側頭部に活動源が認められ、その活動潜時に有意な差は認められなかったが、活動の大きさは、右半球でCDL条件の方がCD(p<0.05)、DL(p<0.01)、D(p<0.01)条件よりも有意に大きかった。また、左半球ではCDL条件の方がDLとD条件(p<0.01)よりも有意に大きかった。以上より、顔の動きを認知する際には顔の輪郭や動く部分以外のパーツが重要な役割を担っていることが示唆された。 次に、動いているドットの中で一部が止まることにより、輝度差なしにその形態を知覚させる方法であるランダムドットブリンキングを用い,健常成人を被験者として顔認知過程を反映する誘発脳波を調べた。以下の視覚刺激を用いた。(1)Upright:模式的な正立顔。(2)Inverted:Uprightを逆にしたもの。(3)Scramble:構成要素は同じだが,内部構造の空間的配置自体が異なる。T5,T6電極で、頂点潜時が刺激提示後250ミリ秒の陰性波(N-ERP250)が各条件でみられた。N-ERP250の頂点潜時は,InvertedとScramble条件で,Uprightに比べ有意に延長していた。この結果より、顔認知過程において,正立顔では起こらない顔の部分の分析的情報処理が行われていることが示唆された。
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