研究課題
数は最も普遍的な概念の一つであると考えられるが、ヒト脳内で数概念がどのように獲得・運用されているかは、未だ良く分かっていない。本研究は、最も単純な数概念の情報処理過程の一つであるカウンティングに着目することで、数概念の獲得と運用のヒト脳内メカニズムの解明に迫ることを大きな目的とする。平成19年度はまず、これまでに行った機能的磁気共鳴画像(fMRI)および経頭蓋磁気刺激(TMS)を用いた実験で示唆されていた、大きな数をカウンティングする際の左腹側運動前野の役割(Exp Brain Res, 2007)に、さらなる考察を加えた。特に、大きな数をカウンティングする際に左腹側運動前野をTMS刺激することで生じる特徴的なエラーの分布を、ランダムウォーク仮説でモデル化して説明することを試み、左腹側運動前野が大きな数をカウンティングする際に、離散的な脳内表現を担っていることを示唆した(Soci Neurosci Abstr, 2007)。また平成19年度は、これらの成果をもとにしながら、カウンティングに重要な神経基盤を評価していくための基礎的実験を行った。特に、これまで行った脳磁図(MEG)を用いた9名の健常成人を対象とした実験では、カウンティングの際の腹側運動前野と頭頂葉といった、脳領野間の相互の関係が捉えられる可能性が示唆されている。さらに平成19年度は、脳波(EEG)と近赤外分光法(NIRS)の同時計測を可能とするキャップを開発した。平成20年度は、これらを用いて、さらに数概念の獲得と運用の脳内メカニズムを明らかとしていく予定である。
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