研究概要 |
混合正規分布モデルにおける推定においては、パラメータの非識別性や、尤度関数の非有界性により最尤推定が不可能であるという問題点があることが知られている。この問題点は、パラメータ空間を制限したり、パラメータに適切な罰則を付けたりすることにより、回避されることが分かっている。本研究は、混合正規分布モデルを含む混合位置尺度分布モデルにおいて、パラメータ空間に制限をつけた最尤推定や、罰則付きの最尤推定などを扱い、その推定量の一致性や漸近有効性などの漸近的な性質を明らかにするものである。 今年度は、まず、各成分の分散の比の最小値に罰則をつけた罰則付き尤度を考え、その罰則付き尤度を最大にする推定量が、強一致性という好ましい性質を持つことを示した。この結果の特殊ケースとして、パラメータ空間に制限をつけたときの尤度を最大にする推定量についても強一致性か成り立つことを示すことができた。これにより、Hathaway(l985)やMclachlan and Pee1(2000)で言及されていた未解決問題が、より一般の枠組みで肯定的に解かれたことになる。さらに、尺度母数そのものに対して罰則を付けた罰則付き尤度も考え、その罰則付き最尤推定量が強一致性を持つことを示すことができた。これにより、Ciuperca, et. al. (2003)の結果の厳密な証明が、より一般的な枠組みで与えられたことになる。また、パラメータ空間に制限を付けた場合の最尤推定値を求めるため、制限付きEMアルゴリズムを構築した。そして、罰則付きEMアルゴリズムとともにそれらの性質を数値実験で調べた。その結果、制限付きEMアルゴリズムと罰則付きEMアルゴリズムの両方で、尤度関数の非有界性に付随するEMアルゴリズムの不安定性が解消されることが示された。
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