研究概要 |
生存時間研究では,患者の予後因子の探索が重要な課題の一つである。ただし,それらの要因が個別に影響を与えることは少なく,多くの場合,交互作用を伴っている。このとき,予後因子の交互作用効果を捉えるための有用な道具(ツール)が樹木構造接近法である。既存の樹木構造接近法の多くが2分岐によって構成されている。そのため,二三の研究では,より複雑な交互作用を比較的簡単なグラフィクスで提示できる多分岐樹木構造接近法を提案することで,2分岐樹木の適切性の評価を試みている。ただし,既存の多分岐樹木構造接近法は,分岐基準にノンパラメトリック(検定)統計量に基づいて構成されているが,その後の解釈までの一貫性を保持するには,各終結ふしに何らかの潜在基礎分布を想定したほうが好ましい。そのため,本研究では,各終結ふしの潜在基礎分布にデータ適応型分布,とくにベキ正規分布を想定したもとで,その尤度比統計量に基づいて多分岐樹木,すなわち,データ適応型多分岐樹木構造接近法を開発した。データ適応型多分岐樹木構造接近法では,得られた樹木の終結ふしにおける生存時間分布の解釈を想定したデータ適応型分布に基づいて解釈できる。その結果は,得られた結果に基づく臨床試験や統計的シミュレーションに繋げることができた。さらに,潜在基礎分布にデータ適応型分布を想定することは,他の分布(Weibull分布および指数分布)を想定するよりも,適合性能に優れた樹木を構成することができた。 多分岐樹木構造接近法の成果は,2007年度統計関連学会連合大会および,日本行動計量学会第35回大会で発表した。そして,そこで他の研究者と議論した成果をとりまとめ,論文として投稿中である。
|