研究概要 |
平成21年度は、(1)未観測交絡因子が存在する場合の因果効果の識別問題、(2)ケースコントロール研究・コーホート研究における因果効果の推定問題、(3)無向独立グラフによる潜在変数モデルの特徴づけとその応用可能性の研究、に取り組み、次のような結果を得た. (1) 線形構造方程式モデルに基づいて,バックドア基準,操作変数法などといった変数選択基準を包括した因果効果の推定可能条件を提案した。また,この結果の因果効果識別アルゴリズムへの実装可能性についても言及した. (2) ケースコントロール研究・コーホート研究に基づいて得られたデータから因果効果を推定することの困難性を明らかにする一方で,因果効果の存在範囲を定式化することに成功した.あわせて、欠損値データが存在する場合の因果効果の存在範囲についても議論した. (3) データから推測された無向独立グラフと潜在変数モデルとの関係を明らかにすることによって,無向独立グラフから潜在変数モデルを選択するための指針を与えた.あわせて,この結果の工学的応用可能性についても明らかにした. (4) 因果リスク差・リスク比の共変量選択問題に取り組み,ある条件の下では因果グラフを用いて変数選択を行うことが可能であることを示した.また、この結果の医学的適用可能性についても言及した.
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