研究概要 |
平成22年度は、1.原因の確率の存在範囲の定式化と推定精度の検討、2.自然な因果効果に基づく因果効果の分解可能性と医学への応用可能性に関する研究、3.グラフィカルモデルに基づく線形回帰モデルにおける弱併合可能問題、に取り組み、次のような結果を得た. (1)疫学分野・社会科学・情報科学の分野で取り上げられる原因の確率について,識別可能でない場合に条件つき単調性という仮定を導入し,そのときの存在範囲を定式化した.また,推定精度の観点から共変量選択問題について議論し,線形回帰モデルとは異なる現象が生じることが明らかとなった. (2)自然な直接/間接効果に基づく因果効果の分解可能性および推定可能性と医学分野における代替エンドポイントの評価問題への適用可能性について議論した.まず,代替エンドポイントが直接的には観測できない場合,ある補助変数を導入することで自然な直接/間接効果が推定前能となることを示した.また,複数の代替エンドポイントが存在する場合においては,それらを統一的に扱う方法論を開発し,ランダム化臨床試験へ応用可能であることを示した. (3)線形回帰モデルにおける併合可能性について,t検定統計量に基づく弱併合可能条件との関連性について明らかにするとともに、選択バイアス問題への適用可能性について議論した.また,本研究で提案した弱併合可能条件は無向グラフにより記述できるため,直観的な把握が容易であることを示した.
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