研究概要 |
HiCEP法は、マイクロアレイなど他の技術では不可能であった未知遺伝子を含む転写物の網羅的単離およびプロファイリングが全ての生物で可能な唯一の実験技術であるが、実験データ取得後の解析が労働集約型の一次元電気泳動(1-DE)パターン比較に基づく発現プロファイル解析法である。そのため、モデル生物で主に用いられているマイクロアレイ実験を行ったときに自動的に得られる"遺伝子発現行列"を作成するのがボトルネックとなり、それがデータ解析の高速化を阻む大きな壁となっていた。平成20年度は、HiCEP解析の主要な目的の一つである発現変動遺伝子の同定を高速に実行するための方法WAD(Kadota et al., Algorithms Mol. Biol., 2008)の開発を行った。既知の発現変動遺伝子が多数判明しているマイクロアレイデータを用いて本手法の評価を行った結果、感度・特異度を評価基準とした場合に他の手法に比べ高い精度を示すことを確認した。また、再現性を評価基準とした場合でも抜群の高再現性を示すことを確認した。従来、感度・特異度が高い手法は再現性が低く、また再現性が高い手法は感度・特異度が低いというトレードオフの関係が指摘されていたが、両方の評価基準において高い精度を示す初の方法WADの開発を行うことができた。本研究成果により、HiCEPデータ高速解析手法の開発という当初の目標が達成されただけでなく、発現プロファイル解析の他の手段であるマイクロアレイ解析における手法選択の既存ガイドラインに比べよりよいガイドラインを提案することもできた。
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