研究概要 |
今年度は, NCBIと複数の研究機関からメタゲノム解析によって得られた遺伝子配列を入手し,その遺伝子配列のアミノ酸配列に対して,Pfamによるドメイン解析をし,機能予測をする予定であったが, Camera(http://camera. calit2. net/)と呼ばれるメタゲノムデータベースが作製され,そこには, Venterらが海水から採取した遺伝子,Rubinらが土壌から採取した遺伝子配列など12の環境から得た遺伝子配列がデータベース化されており,ドメイン検索もされていた.そこで,このデータベースの中から,細菌の細胞壁ペプチドグリカンを分解する代表的な加水酵素であるリゾチームのホモログが検出できるかどうかを調べるため,リゾチームの配列をクエリーとしてBLAST(閾値はE-value≦1.0)により探索した結果,活性残基が保存されているタンパク質と保存されていないタンパク質の両方が検出された.正確なホモログを推定するためには,活性残基を含めた配列の類似度を調べる必要があることが分かった.これまでにリゾチームには5つのタイプ(型)があることが分かっているが,その中でもC-typeは基質結合に関与するアミノ酸残基が推測されているため,立体構造が既知なC-typeリゾチーム(PDB id:1hel)上で, Cameraにおいて検出されたホモログにおいて保存されたアミノ酸残基の位置を調べた.その結果,これまでに基質結合部位に関与すると考えられている殆どのアミノ酸残基は保存されており,それ以外では,ループ領域にある多くのアミノ酸残基に置換がみられた.現在,メタゲノム解析により,有用な酵素や活性の高い酵素を発見する研究が重要視されている.そこで,今後は,環境中にある遺伝子の中から正確なホモログを探索し,ペプチドグリカンを分解する酵素を網羅的に探索する.
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