研究課題
mGluRlノックアウトマウスおよびPKCγノックアウトマウスを用いて電気生理学的、形態学的な解析を行った。電気生理学的解析により、これらのノックアウトマウスの多くのプルキンエ細胞においては登上線維による単一支配が確立していないことが分かった。しかし、入力する複数の登上線維間には応答の振幅や伝達物質の放出確率といった機能には優劣が付いていることを明らかにした。また、神経トレーサー法と免疫組織化学を組み合わせた形態解析により、登上線維支配様式に関する以下の表現型を明らかにした。(1) 登上線維の支配領域が近位に退縮していた(2) 多重支配を引き起こす余剰な登上線維による支配は主に細胞体と樹状突起基部に存在していた。(3) 余剰な登上線維は、近隣のプルキンエ細胞を支配する登上線維の比較的短い側枝として、分子層やプルキンエ細胞層内を横走してやってきた。(4) こうした近隣細胞間を横走する登上線維の投射様式は、生後14日令までは野生型と欠損マウスのどちらにも頻繁に観察された。(5) その後の発達過程において、多重支配を招く横走する登上線維は野生型マウスで急速に消失したのに対して、欠損マウスでは残存した。以上の結果は、mGluRlシグナル伝達系が平行線維シナプス活動を細胞内へと伝達することによよって、優勢な登上線維による支配を強化し、劣勢な登上線維による支配を細胞体や樹状突起基部から除去することにより、単一支配へ移行させる分子機構であるとの結論に達し、現在論文作成中である。
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J. Neurosci 28
ページ: 4995-5006
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 105
ページ: 11998-12003