本研究では、覚醒下ラットを用いて味覚と嗅覚の連合学習を行い、味覚情報と嗅覚情報の統合が島皮質(そして関連する前頭皮質、嗅皮質)でどのように表現されるのか? 学習依存的な変動が観察できるのか? を明らかにすることを目的としている。今年度は本研究において必須である覚醒下動物のヘッドアンカー式動物固定法と記録法の確立を中心に行った。 最初に、麻酔下で歯科用セメントを用いて筒状ヘッドアンカーを頭蓋骨に固定した。さらに島皮質背側部の頭蓋骨及び硬膜を切除し、後日の記録日まで軟シリコンによる仮蓋を施した。麻酔から覚醒後2週間回復させ、覚醒下で筒状ヘッドアンカーを用いて動物固定装置(成茂科学 : SR-8N改)に固定した。動物固定装置上で動物が安静状態を保てるよう、12時間絶水を行い、動物固定装置上で給水させるトレーニングを1週間行った。 このような覚醒実験条件下、現在バナナ香と蔗糖水(甘み)、オレンジ香とキニーネ水(苦み)の弁別連合学習パラダイムを遂行中である。またこの記録システムを用い、弁別連合学習前の動物からバナナ香、オレンジ香の嗅覚応答及び蔗糖水、キニーネ水に対する味覚応答を記録している。弁別連合学習が成立した個体では、バナナ香と蔗糖水の両者に応答する細胞数の上昇及び、同時刺激による応答増強、また蔗糖水味覚応答のオレンジ香による抑制等が連合学習前より頻繁に観察されることが期待される。また、味覚刺激と嗅覚刺激の組み合わせを逆転させ(reverse learning)、味覚嗅覚同時刺激の効果の変化を観察する予定である。
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