研究概要 |
転写調節因子であるArx及びFez遺伝子の欠損マウスにおいて,嗅細胞の軸索が嗅球へと到達できない嗅覚神経回路形成の異常が見られる。Arx及びFez遺伝子の下流に存在し嗅覚神経回路形成の制御をしている遺伝子を同定するために,Fez遺伝子欠損マウスの嗅上皮及びArx遺伝子欠損マウスの嗅球において発現量の変化している遺伝子をDNAマイクロアレイによって探索した。DNAマイクロアレイの結果,Fez遺伝子欠損マウスの及び嗅上皮及びArx遺伝子欠損マウスの嗅球において約500個の遺伝子が2倍以上の発現量の変動を示すという結果が得られた。これらの遺伝子群の中から,細胞接着分子・転写制御因子・シグナル伝達分子などの神経回路形成に関与すると予想される遺伝子についてin situ hybridizationを用いて野生型及びFez遺伝子欠損マウス,Afx遺伝子欠損マウスの嗅覚系における発現パターンと発現量を調べた。その結果,Fez遺伝子欠損マウスの嗅細胞においてG gamma 13というシグナル伝達分子の発現が野生型に比べて減少していることが明らかになった。 Arx遺伝子欠損マウスの嗅球においては細胞分裂を制御する分子であるPrc1,転写調節因子であるEBF3,細胞接着分子であるPlexin C1の3種類の遺伝子の発現が野生型に比べて減少していた。これらの遺伝子が嗅細胞の嗅球への軸索投射を制御している可能性があることが示された。
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