Ca2+イメージングにおいて、二光子顕微鏡とニポウ型ディスク高速リアルタイム共焦点顕微鏡へ容易に光路を切り替えられるように測定系を改善した。麻酔下のマウス小脳皮質において、二光子顕微鏡で詳細な神経回路の立体構造を調べてから、リアルタイム共焦点顕微鏡で高速(30Hz)かつ広範囲(300マイクロメートル四方)にCa2+活動を調べることができるようになった。 Ca2+イメージングの結果、全体的に小脳皮質の細胞は一斉に活動しており、とりわけ縦方向(頭尾方向)でCa2+活動に強い相関があることが分かった。つまり、縦方向に並んだ細胞は、同じタイミングで活動しているということである。また、電気生理とCa2+イメージングの同時記録により、登上線維入力による電気活動とCa2+活動が対応することを確かめた。この縦方向の同期は、強力な登上線維入力の元にある下オリーブ核が同期していること、1本の登上線維は縦方向に並んだプルキンエ細胞に入力しているという過去の知見と合致する。過去の電気生理実験では、複数神経細胞活動を調べようとしても、電極間距離か数百マイクロメートルも離れており、電極の個数も限界があった。高速Ca2+イメージングにより初めて、近くの隣り合う細胞での活動が比較できるようになった。 また、プルキンエ細胞と、分子層の介在ニューロンであるstellate細胞の活動を比較した。同じ種類の細胞同士だけでなく、プルキンエ細胞とstellate細胞でも、縦方向に並んだ細胞は相関が高かった。Stellate細胞が登上線維入力を受けるという報告は、スライス電気生理実験や覚醒ラットの電気生理実験より示唆されていたが、実際の脳で登上線維からstellate細胞へ入力があるか不明であった。高速かつ広範囲のCa2+イメージングによって、生きたマウスでstellate細胞が登上線維入力を受けて活動している可能性が高まった。
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