独自のコンピュータープログラムによりNCBIマウス蛋白質データベースから抽出した蛋白質群に関して、線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュに対応因子のある保存性の高い因子を選択し、マウス脳cDNAライブラリーからサブクローニングを行った。PCRによる全長cDNAの増幅に成功した18種の因子を以後の解析対象とし、神経細胞、特に後シナプス肥厚(PSD)に局在が報告されている既知蛋白質7種との総当たり相互作用スクリーニングを行い、新規な相互作用を多数同定した。いずれの相互作用も報告例のない、新規相互作用である。これらの因子のうち、マウス脳における遺伝子発現部位のデータベースであるAllen Brain Atlasにより海馬、小脳の両方にmRNA発現が確認された7因子(いずれも機能未知蛋白質)について抗体を作成した。これらの抗体の利用により、2種の蛋白質は後シナプス肥厚(PSD)への局在が見られ、さらに少なくとも他の2種の蛋白質は海馬初代培養系において神経活動依存的に蛋白質発現量が制御されていることを発見した。これらの成果は研究計画で掲げたデータベースサーチの有用性を証明する結果であると共に、シナプス可塑性に関わる可能性のある分子を効率的かつ多数同定することに成功したことは、記憶や神経疾患の分子基盤の理解を前進させるための重要な成果といえる。 また、データベースサーチをより効率的に行うため、アルゴリズムを再構築し、新たなプログラムを作成した。これにより、データベースサーチの効率を大幅に向上させることに成功した。
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