本研究ではアマ棋士を対象にして、将棋局面の認知、記憶、思考の脳メカニズムが、習熟度の違いによりどのよう、に異なるかを主にfMRIを用いて調べる。本年度は、fMRIを用いて、アマ上級者と中級者で、将棋盤面の知覚処理の際の脳活動にどのような違いがあるかを調べた。 昨年度の将棋盤面知覚処理に関わる心理物理実験によって、棋力が向上するにつれて将棋盤面知覚処理が早くなることを示した。本年度のfMRI実験では、9カテゴリーの視覚刺激(ヒトの顔、景色、一般的物体、チェスのパターン、中国将棋のパターン、将棋序盤、将棋終盤、ランダムな将棋パターン、スクランブルパターン)を用いた。12秒のブロックごとに異なるカテゴリーの刺激を提示し、ひとつのブロックにはひとつのカテゴリーの刺激24個を次々と提示した。4個のスキャンを行い、その合計として、それぞれのカテゴリーの刺激は10ブロックで提示した。被験者の刺激への注意を維持するため、被験者には同じ刺激が連続して繰り返し提示されたときにボタンを押して報告するように指示した。高位のアマチュア棋士では、後頭葉と頭頂葉を分ける後頭-頭頂溝の頭頂側の壁の内側部(楔前部と呼ばれる部分)が将棋序盤パターンだけで活動した。低位のアマチュア棋士では、この部位は全てのゲーム関連パターン(将棋序撃、将棋終盤、将棋ランダム、チェス、中国将棋)で活動した。 今年度のfMRI実験から、将棋パターンを見たときのアマ棋士の頭頂葉後内側部の楔前部の神経活動に、棋力による違いのあることを見いだした。
|