申請者は平成19年度にシャトリングが出来ないDab1が樹状突起形成をレスキュー出来ないことを報告した。その後、このシャトリング出来ないDab1はReelinのレセプターであるApoER2への結合能力が低下していることが明らかになった為、Reelinシグナル伝達の阻害が核細胞質間のシャトリングの阻害によって引き起こされたのか、あるいはReelinレセプターへの結合を阻害したことによって引き起こされたのか、区別が出来ないことが明らかになった。シャトリングが出来ないDab1は、N末端の核移行シグナルと二つの核外移行シグナルを全て変異させたものであり、理由は明らかではないが、核移行が阻害されるものであった。N末端の核移行シグナルを単独で変異を加えた場合でもDab1の核移行が阻害されないことから、既知の核移行シグナル以外に別の核移行シグナルがある可能性が示唆された。そこで、Reelinレセプターへの結合を阻害せずに、核移行のみを阻害するDab1を得る為に、未知の核移行シグナルの同定を試みた。様々な組み合わせでDab1に点変異を導入し、核移行に重要なアミノ酸のスクリーニングした結果、PTBドメインの1つのアミノ酸を変異させることにより、ApoER2への結合は阻害されずに、核移行が阻害されるDab1を得る事ができた。この結果は、Dab1が既存のモチーフには一致しない核移行シグナルを持ち、N末端側にあるNLSと合わせて二つの核移行経路を経由して核に移行出来る事を示唆しており、Reelinシグナルの核への伝達が行われているのであれば、そのアウトプットにおいて何らかの違いを生む仕組みを提供する可能性がある。
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