研究課題
これまでの我々の研究により、PACAPがアストロサイトの活性化促進因子である可能性が示唆された。しかし、PACAPが生体内でアストロサイトの活性化因子として機能するか、またPACAP処理されたアストロサイトがどのような動態を示すかについては不明な点が多い。そこで本研究では虚血性神経細胞死誘導後に認められるアストロサイトの活性(グリオーシス)におけるPACAPの生理的作用を検討した。野生型マウスを用い、海馬に遅発性神経細胞死が誘導される一過性前脳虚血モデルを用い、アストロサイト活性化領域(海馬領域)でのPACIR発現量と発現細胞種の経時的変化をウェスタンブロッティング法および免疫染色法により比較した。その結果、PACIRは脳虚血1日後に免疫陽性反応がピークとなり、その後緩やかに低下して56日後には正常値に戻った。またPACIR免疫陽性反応は、脳虚血1日目では主に神経細胞マーカーと重なったが、虚血3日後からはアストロサイトと一部重なるようになり、7日後には海馬の広範囲においてPACIR免疫陽性のアストロサイトが観察された。その後、PACIR陽性のアストロサイトは海馬の神経細胞死領域のみに限局した。次に培養アストロサイトに掻き傷を作成し、反応性アストロサイトを誘導する培養実験を確立し、そこにPACAPを添加した。PACAPを10^<-15>から10^<-7>M添加したところ、PACAP10^<-11>、l0^<-13>M添加群では傷害領域周辺部の増殖している反応性アストロサイトの割合が溶媒添加群の約2倍に増加した。以上の結果から、PACIRは神経損傷領域を取り囲むアストロサイトにおいて強く発現し、PACAPは反応性アストロサイトの増殖を促進する作用を有することが明らかとなった。翌年度はようやく安定して繁殖可能となったEGFP-GFAP Tgマウスを用いてアストロサイト活性化制御機構を引き続き解析する。
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Regul Pept 145(1-3)
ページ: 88-95
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http://www10.showa-u.ac.jp/~anat-1/index.html