【目的】脳におけるアポリポ蛋白E(アポE)による自然免疫制御機構を調べる。平成19年度はリポポリ多糖(LPS)によるToll様受容体4(TLR4)シグナル経路の活性化がアポEによりどのように制御されるかを調べた。 【方法および結果】初代培養ミクログリアまたはマクロファージ細胞をLPSで刺激し、培養上清にアポEを加えたときの蛋白質のリン酸化、量の変化をRT-PCR、ウエスタンブロット法などで調べた。ミクログリア細胞およびマクロファージ細胞にLPS刺激を行うとp38MAPキナーゼ、IkappaB、ERK、JNK、AKTなどがリン酸化され、そのシグナル経路の下流であるiNOSが活性化したりIL-6やTNF-alphaなどの分泌が促進されたりした。あらかじめアポEを培養上清に加えておくとp38MAPキナーゼ、IkappaB、ERK、JNKのリン酸化は抑制された。さらにlkappaBの分解が抑制され、NFkappaBの核移行が抑制された。これらの変化によりiNOSに誘導される一酸化窒素、IL-6、TNF-alphaなど炎症性サイトカインの分泌も抑制された。しかしAKTのリン酸化は抑制されなかった。 アポEによるTLR4経路制御機構に関わる蛋白をRNA干渉法あるいは阻害剤などを用いて検索した。その結果、スカベンジャー受容体BやCXCR4などの関与が示唆された。しかし、アポE受容体は関与しないことがわかった。 【まとめ】アポEはLPSによるTLR4シグナル伝達経路の活性化を抑制することで炎症性サイトカインの分泌を負に調節することがわかった。この経路にはこれまで知られているアポE受容体ではなくスカベンジャー受容体BやCXCR4が関与している可能性が示唆された。
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