研究概要 |
オートファジーは細胞内で蛋白分解を担うメカニズムで生体内では欠かせない。依然未解明の部分が多く特に筋組織での研究はほとんど進んでいない。オートファジー異常を原因とする疾患群「自己貪食空胞性ミオパチー(AVM)」の代表疾患Danon病を中心に研究することで、AVMの疾患概念の確立と、筋組織での検討から普遍的なオートファジーの解明を目指した。AVM患者の生検筋を用いて自己貪食空胞を筋病理学的に評価した。光顕的・電顕的解析により、蓄積性の変化である自己貪食空胞は、加齢により有意な正の相関を示した。オートファジー/リソソーム系、エンドソーム系の機能亢進がみられ、筋変性との関連が示唆された。免疫電顕的解析から、リソソーム蛋白の発現と加齢による変化から、空胞の周囲にde novoでの膜形成が推測された(Sugie K, et al. Ann Neurol, 2008)。一方、本疾患の予後を規定するきわめて重要な因子である心筋症の病態について特徴を見出した。調査した患者全例で心筋症を認め、発症年齢の早い男性では大半が肥大型で、発症の遅い女性では拡張型が多かった。左室高電位とWPW症候群が高頻度にみられ、ペースメーカー植込みや心臓移植が少数例ながら施行されていた。Danon病では、心筋細胞内での自己貪食空胞の蓄積やグリコーゲンの貯留により過剰な房室伝導や心予備能の低下を来すことが示唆された(杉江和馬, 他. 心臓, 2009)。今後、より詳細な病理学的解析によりAVMの病態の解明と骨格筋におけるオートファジー機構と病態との関連の解明が求められる。また近年、Danon病に伴う症状として、心筋症以外にも関節変形や自動症などの精神症状、脳血管障害などの報告があり、全身疾患として臨床症状の再精査が重要となる。
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