ハンチンチンタンパク質(htt)のアミノ末端の17アミノ酸残基からなるペプチドをCFPまたはYFPの蛍光タンパ19質のカルボニル末端に結合させた融合タンパク質(CFP/YFP-N17)が蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)を起こし、核外移行することから、このアミノ末端配列だけで二量体を形成し、核外移行シグナル(NES)として働くことを確認した。このペプチドは両親媒性のヘリックス構造をとることが、その配列より予測されるため、2アミノ酸づつアラニンに置換して、核外移行に重夢な残基を決定した。その結果、疎水性のロイシンやフェニルアラニンをアラニン置換した場合に、核外移行が妨げられ、FRETも起こらなくなった。しかしながら、親水性残基のグルタミン酸やリジン残基をアラニンに置換した場合には核外移行は影響されなかった。このことは、両親媒性のヘリックスの疎水性部分で二量体を形成し、親水性の残基が露出していることを示している。さらに、3つあるリジン残基をアラニンに置換した変異体においてFRETが検出された。これらの結果より、7番めのロイシンから11番目のフェニルアラニンまでが中心となって二量体を形成し、NESとして働いていると考えられる。YFP-N17を発現させた細胞を一般的な核外移行阻害剤であるレプトマイシンBで処理するとその核外移行が阻害された。このことは、httのNESが一般的なCRM1/Exportin1により認識され核外移行されていることを示している。この結果は、CRM1はアルファヘリックスの疎水的な領域と結合することから、CRM1に認識されたhtt分子は二量体を形成していないことを同時に示唆しており、httが二量体をポリグルタミン部分以外ですることにどのような意味があるのかは、今後の検討課題となった。また、httのN末端にはSUMOが結合するという報告があり、強制的にN末端のリジン残基にSUMOを結合させたYFP-N17およびYFP-httQ62の高頻度で核に蓄積することを確認した。この結果は、SUMO化によりhttのNESか機能しなくなることを示唆している。
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