研究概要 |
水俣病患者の中には,不随意運動,運動調整障害などの錐体外路症状が認められる患者が存在することが知られている。しかしながら,錐体外路症状を惹起する病変については未だ明らかになっていない点が多い。そこで,これまでに剖検された胎児性,小児性および成人性の水俣病患者の錐体外路系諸核およびその経路を中心として病理学的に再検索を行い,錐体外路症状を惹起した病変を明らかにすることを目的とする。 平成19年度は,国立水俣病総合研究センターに保存されている水俣病患者の病理組織標本を用い,錐体外路諸核およびその経路における病理組織学的検索を実施した。合わせて,カルテに記載されている臨床症状との関連性を検討した。胎児性,小児性および成人性それぞれにおいて,いわゆる水俣病の症状が重度であり錐体外路症状がカルテに記載されている症例のなかには,錐体外路諸核およびその経路にも病変が認められる症例が存在することがわかった。また,病理学的に脳全域が広範にわたり重度に傷害されている症例においては錐体外路諸核にも病変が認められることがわかった。 合わせて,国立水俣病総合研究センターに保存されている水俣病患者の組織標本およびカルテのデーターべース化,破損標本の再作製(HE染色および免疫染色の実施)も実施した。
|