本研究課題の目的は、遺伝子改変マウス作製のため、マウス胚性幹細胞(ES細胞)から相同組換え体を効率的に作製する手法を確立することである。まず、ターゲティングベクター(TV)作製の効率化のため、BAC-Red/ETシステムとMultisite Gatewayを組み合わせたポリAトラップ型TV作製法の確立を研究協力者と共に行い、19年度中に実用化することができた。また、BAC-Red/ETシステムを用いたTV作製法にさらなる改良を加える事で、極めて迅速なTV作製を可能とした。相同組換え体クローニングのためのネガティブ選別に用いるジフテリア毒素遺伝子の発現プロモーターの選定を行い、現在は主にCAGプロモーターを使用することで、安定して相同組換え体を取得することができている。相同組換え効率の上昇を目的として、相同組換え関連タンパクの発現ベクター導入と、NHEJ(nonhomologous end-joining)関連タンパクのRNAiによる発現抑制の効果を検証し、有意に相同組換え効率を上昇させる手法を確立することができた。開発した手法を適用する事で、従来の条件では平均1%以下であった相同組換え効率を約4.5%にまで上昇させ(平成20年度実績)、生殖系列伝達するキメラマウスを多数樹立する事ができた。これにより、本研究課題の目的であるシナプス機能分子を標的とした遺伝子改変マウスの系統的な作製を達成することができた。
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