研究概要 |
中枢神経は損傷、脱落をうけるとアポトーシスが誘導され再生しないという概念から緑内障をはじめとする中枢神経疾患の治療は難しいとされてきた。一方、魚類は神経損傷させても、神経輔索再生阻害因子をコードする遺伝子がないため網膜神経節細胞(RGC)より再生が可能であり、神経再生モデルとして用いられる。これまでの実験より網膜・視神経系を用いた神経再生モデルにおいて、神経損傷後のRGCではレチノイン酸(RA)レベルが上昇することがわかった。その原因は視神経損傷早期にRA合成酵素RALDHが上昇し、RA分解酵素のCYP26alが減少することに起因した。また、ほぼ同じタイムコースで細胞内レチノイン酸結合タンパク質II(CRABPII)が上昇することが分かった。CRABPIIは,レチノイン酸を核内へ輸送する機能を持つので、何らかのタンパク質が発現することが軸索伸長作用を誘導している可能性がある。その候補として神経型-酸化窒素合成酵素(nNOS)が見つかった。ウェスタンブロットの解析により金魚網膜をRA処理すると濃度依存的にnNOSの発現が高まった。またRA処理した網膜内では-酸化窒素自体の産生量も処理直後より止昇することがグリース法により分かった。さらに網膜組織片培養の結果、NOS活性上昇に伴うNOの産生増加がNO-sGC-cGMPの経路を活性化し、金魚視神経再生時の神経突起の伸長促進に関与することが示唆された。
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