中枢神経は損傷、脱落をうけるとアポトーシスが誘導され再生しないという概念から緑内障をはじめとする中枢神経疾患の治療は難しいとされてきた。近年、ほ乳類における中枢神経再生の試みとして末梢神経移植や幹細胞の神経様分化誘導の応用が盛んに行われているが、いずれも機能的な再生には至っていない。一方、魚類は神経損傷させても、神経軸索再生阻害因子をコードする遺伝子がないため再生が可能であり、神経再生モデルとして用いられる。この網膜-視神経系を用いた神経再生モデルにおいて、神経損傷後の網膜神経節細胞(RGC)ではレチノイン酸(RA)レベルが上昇し、一酸化窒素(NO)-cGMPによる軸索伸長を起こすことがわかった。視神経損傷後の網膜のRGC層において神経型一酸化窒素合成酵素(nNQS)の発現が高まることとNOSの活性化、NO産生ともに上昇していることが分かったのでそれらのシグナルと神経軸索伸長との関連シグナルを各阻害剤やsiRNAを用いて調べた。その結果、網膜組織片培養における軸索再伸長効果はnNOS-cGNP-PKG経路の活性化により促進されることが分かり現在論文投稿中である。またnNOSの発現上昇時期に一致してRNレベルも高まることを見出した(論文報告済み)のでそれらの関係を精査するとnNOSの発現誘導はレチノイン酸によって制御されていることがわかった。これらのことからさらに詳しいメカニズムを解明することで親神経の再生および緑内障をはじめとする難治性中枢疾患に対する包括的治療に大きく貢献できると考える。
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