研究概要 |
Caytaxinは,小脳運動機能障害や精神症状を呈するカイマン運動失調症の原因分子であり,変異による疾患との関連から,運動学習や記憶など神経可塑性に関与していると考えられる。これまでに,我々はCaytaxinが神経細胞のプレシナプスに局在すること,また,翻訳レベルでのCaytadnの発現制御の可能性を明らかにしてきた(Hayakawa et al.,Brain Res2007)。そこで,本研究では,さらに発現制御機構を以下のように解析した。 (1)Caytaxinのコーディング領域と3'非翻訳領域(3'UTR)を含むEGFP発現ベクターを構築し,神経芽細胞腫N1E-115細胞における強制発現を行った。その結果,Caytaxinのコーディング領域に加えて3'UTRを含むベクターでは,コーディング領域のみに比べ発現の減弱がみられ,3'UTRを介した発現抑制機構の存在が示唆された。 (2)NIE-115細胞のDMSOによる分化誘導系を用いて,KClによる脱分極刺激後にCaytaxinの発現をwestem b1ottingにて解析したところ,Caytaxinの発現の上昇が見られた。よって,神経細胞の活動に依存した発現の可能性が示唆された。 (3)ラット海馬培養細胞にCaytaxinのEGFP発現ベクターの遺伝子導入を行い,time lapse imagingにより観察した。神経突起に斑点状に存在するCaytaxinは,移動,分離または融合を反復する現象が見られ,何らかの刺激に伴ってダイナミックに挙動を変化させていることがわかった。以上の結果から,Caytaxinの3'UIRを介した発現抑制および神経活動に伴った発現制御の可能性が示唆された。今後は,さらにCaytaxinのプレシナプスにおける機能の解明により,シナプスの形成および神経可塑性の分子機構の解明に繋がる可能があると考えられる。
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