研究概要 |
大コンダクタンスCa^<2+>活性化K^+(BK)チャネルは,骨格筋や平滑筋,腺細胞及び神経等の興奮性細胞に特に多く分布し,その活性化に伴って生じる過分極により,細胞膜興奮と細胞内Ca^<2+>濃度上昇を制限するので,BKチャネルは細胞膜興奮に対する負帰還機構を担うと考えられている。BKチャネル開口薬の開発は臨床的にも注目され,高血圧をはじめ,気管支喘息や緊張性膀胱等の平滑筋緊張が増加したような疾患や脳血管循環の改善にも有効であると考えられ,平滑筋を標的としたBKチャネル制御薬の開発は精力的に行われている。一方,中枢神経系にも豊富に発現するBKチャネルは,その生理的意義に未解明な部分を多く含んでいるため,創薬の標的としては発展途上である。本研究では,現在まで明らかとなっていないことが多い中枢神経系BKチャネルの生理機能と病態での機能変化を明らかにし,イオンチャネル創薬の標的とすることを目指した。本年度は,全反射蛍光顕微鏡を利用した一分子可視化技術によって,生体から単離した細胞や培養細胞に発現したBKチャネル一分子の生細胞膜表面上での局在と分子動態をリアルタイムで蛍光観察した。この過程で必要となったBKチャネルやその関連タンパクの蛍光標識体を作製した。その結果,BKチャネル一分子もしくはその集合体の分子挙動を可視化することに初めて成功した。その分子動態は,修飾タンパクであるβサブユニットとの複合体形成,細胞骨格であるアクチンとの分子間相互作用,カベオラ構造を形成するカベオリンとの分子協関によって制限されることが示唆された。本研究によるBKチャネル一分子の可視化解析は,BKチャネルを標的としたイオンチャネル創薬を目指す上で,非常に有益な情報を提供し得ると考えられる。
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