「研究の目的」に基づきEph-FGFR複合体の下流シグナル分子との相互作用を詳しく調べた結果、以下の研究成果を得た。 (1) 昨年度までの研究でEphAとFGFRによる異なる受容体間のクロストークとそれらによる複合体の形成を見出した。さらに両方の受容体の下流にFRS2αが存在することも発見し、従来FGFRの下流分子として知られているFRS2αがEphAと直接的な相互作用を持つのかどうかを検討した。その結果、FRS2αはEphAと直接結合し、リン酸化を受けることを発見した。つまりこれはEphA、FGFR、FRS2αの3分子が複合体を形成する事を示唆している。 (2) これら3分子の結合様式をYeast two-hybrid法とin vitro binding assayにて検討したところ、それぞれ異なる部位で結合を示し、さらに培養細胞をもちいた発現実験においても3分子が同時に結合する事を示した。 (3) この3分子複合体を介したシグナルがもつ生物学的意義を調べるため、これら全てを発現しているマウス胚由来神経幹細胞をもちい、その増殖作用に及ぼす影響を検討した。両受容体のリガンドであるFGF2およびephrin-A1による刺激により増殖が亢進したが、EphAおよびFRS2αのドミナントネガティブ分子を発現させることでリガンド刺激の有無に関わらずその増殖が顕著に阻害された。 以上より、EphA4、FGFR、FRS2αの3分子が複合体を形成することを明らかにし、この複合体を介したシグナルが神経幹細胞の増殖において重要な役割を担うという新たな知見を示した。また以上の研究結果をまとめ、学術誌「Genes to Cell」に発表した。
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