研究課題
スコットランドの精神疾患多発家系の遺伝学的研究で発見されたdisrupted in schrzophrenia 1 (DISC1)は、その後の解析の結果、コードする蛋白質が大脳皮質構造形成に関わる可能性が示唆され、世界的な注目を集めている。本研究では、脳内皮質構造の中でも大脳以外の皮質構造を中心に、発生のそれぞれの過程において、どのような組織構築の異常がDISC1の機能欠失によって起こるのかを明らかにすることを試みた。siRNA発現ベクターおよびDISC1の変異体遺伝子発現ベクターを作成し、子宮内電気穿孔法を用いてこれらを発生中の中枢神経系に導入した。その結果、DISC1が発生中の大脳皮質興奮性神経細胞のみならず、海馬皮質の発生にも重要な役割を果たしていることが判明した。さらに、DISC1結合分子である、やはり統合失調症および双極性感情障害に連鎖を示すpericentriolar material-1 protein (PCMI)、さらにBardet-Biedl syndromeの原因遺伝子であるBardet-Biedl syndrome-4 protein (BBS4)が、DISC1とともに発生中の大脳皮質形成に重要な役割を持つことを明らかにした。また、GABA作動性抑制性神経細胞におけるDISC1の機能解析を行うために,発生期マウス脳の大脳基底核原基特異的なプラスミドベクターの導入を試みた。その結果、DISC1が大脳皮質抑制性神経細胞の発生にも重要な役割を果たしていることが判明した。これらの研究の結果、脳の発生段階における分子的な異常が神経細胞の発生・発達に障害を及ぼし、成熟後の統合失調症発症をもたらす可能性が示唆された。
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Arch.Gen.Psychiatry 65(9)
ページ: 996-1006