研究概要 |
ショウジョウバエは遺伝学的な研究が容易であり,哺乳類の神経細胞死の特徴も兼ね備えた動物である。また,全ゲノム配列が既知であり,ヒトの疾患原因遺伝子として同定されている遺伝子の3分の2がゲノム上に存在していることが明らかとなり,疾患研究として有用なモデル動物である。そこで本課題は,ショウジョウバエを用いてゲノムワイドの網羅的なスクリーニングを行うことで,新規の遅発性神経細胞死に関連する遺伝子を同定・解析を行うものである。本スクリーニングから遅発性神経変性のフェノタイプを有するショウジョウバエ379A株を得ることに成功した。379A株は神経細胞死ではなく軸索変性を引き起こしていることを明らかにした。マッピングした結果,379A株の原因遺伝子は,Miltonであることが明らかとなり,MiltonのcDNA全長をクローニングした。。Miltonはミトコンドリアの順行輸送に必要不可欠な分子として明らかになっている。379A株の神経細胞の軸索においても,ミトコンドリアの順行輸送が異常であることが予想されることから,379A株の神経細胞のミトコンドリアの挙動を検討していきたい。またMilton分子の異常と軸索変性とが,どのような分子メカニズムでリンクしていくのか検討していくために,クローニングしたMiltonc DNAを利用し,Miltonを過剰発現するトランスジェニックハエを作製する予定である。 以上のように,今後,ミトコンドリアの順行輸送の異常と軸索変性との関係を明らかにすることで軸索変性の分子基盤を明らかにすることが出来るものである。
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