臨界期での経験依存的塑性の固だ化か進む渦程で視覚野の皮質神経回路レベルでどの部分の神経結がどのように変化するのかは明らではない。本年度は各種トレーサーやウイルスベクターによる遣伝子導入により、特定の皮質神経回路の効率的・特異的な標識を行うことを目的に研究を進めた。順行性、逆行性レーサーを皮質の上層、(2/3層)あるいは下層(5/6層)にのみ投与することによって左右視覚野間をつなぐ脳梁結合の層特異的な神経結合を明らかにし、学会報告を行った。また緑色蛍光タンパク(GFP)遺伝子を組み込んだレンチウイルスベクターを一次視覚野に投与し、様々な種類のプロモーター(CaMkIIやCWV、CAG)で比較検討した結果、CAGプロモーターを用いる場合が最も強く標識され、GFPの免疫組織染色を行わずとも細胞の樹上突起形態を可視化することができた。さらに遣伝子導入装置を用いて子宮膜内のマウス胎児脳に雷気穽孔法により遣伝手導入を行い、皮質2/3の層奮性細胞を特翼的に標識した。GFPの免疫組織染色を行わずとも樹状突起、軸索形態が明瞭に観察することができ、順行性トレーサーを用いて得られた脳梁投射軸索の層特異的な分布パターンと同様の結果を確認することができた。これまで良く用いられてきたトレーサーではなく、ウイルスベクターを用いて特定の皮質神経回路を標識することにより、ウイルスベクターに可塑性関連分子のノックダウン機能を付与するなどの新たな可能性が生じ、皮質神経回路レベルでの可塑性の固定化プロセスを明らかにする上で形態変化とともに可塑性の分子基盤の解明につながると考えられる。
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