研究概要 |
筆者が所属する研究室(基礎生物学研究所・脳生物学研究部門、山森哲雄教授)では、霊長類の領野特異的に発現する遺伝子を解析することによって大脳皮質機能の問題に迫ることを目指してきた。本研究の目的は、我々の研究室でこれまでに発見してきた領野特異的遺伝子についてその機能に関する知見を得ることである。 occ1は霊長類成体の大脳皮質一次視覚野で入力層に極めて特異的に発現する遺伝子として同定された(Tochitani et.al., Eur J Neurosci, 2001)。興味深いことにocc1遺伝子の発現は、神経活動依存的な調節を受け、occ1遺伝子が成体の視覚野における可塑性に関与している可能性を示唆している。 本研究では、エレクトロポレーション法によってocc1遺伝子をマウス大脳皮質に過剰発現させ、その影響を形態学的、電気生理学的に解析する実験を行った。occ1遺伝子を大脳皮質神経細胞に過剰発現させた影響を細胞の微細形態のレベルで検討するため、共焦点顕微鏡を用いて樹状突起の観察を行い、樹状突起上の各部分における突起数をカウントした。その結果、コントロール個体とocc1遺伝子導入個体とで、突起の数に有意な差はみられなかった。またスライス電気生理実験によって細胞膜の興奮性、活動電位の性質などの基本的な性質について解析を行った結果、コントロール個体とocc1遺伝子導入個体とで、いずれのパラメータについても有意な差はみられなかった。これらの結果はocc1遺伝子の機能を理解する上で重要な基礎データとなる。
|