中脳上丘中間層ニューロンのバースト発火は興味の対象にすばやく視線を向ける眼球サッケードの制御に重要である。本研究ではバースト発火に対するGABA_B受容体の役割を検討した。GABA_A受容体拮抗薬gabazineの存在下、上丘浅層を電気刺激すると中間層non-GABAニューロンでバースト発火が誘発された。GABA_B受容体拮抗薬のCGP52432(CGP)を追加すると、バースト発火の持続時間は顕著に増大した。CGPを浅層に局所投与しても同様の効果が観察され、gabazine存在下ではGABAニューロンもバースト発火を示すことから、以上の結果は、浅層のGABA_B受容体がシナプスから遊離されたGABAにより活性化されるとバースト発火の持続時間を制限する機能を持つことを示唆している。浅層に存在するnarrow field vertical cellでは局所の連続電気刺激によりCGP-sensitiveな外向き電流が誘発され、wide field vertical cellでは遠位樹状突起へのグルタミン酸パフ適用で誘発される脱分極がGABA_B受容体作動薬のパフ適用によってshunt効果で抑制された。さらに、浅層non-GABAニューロンにおいて局所連続刺激後に誘発されるEPSC_sの振幅は減弱し、この減弱はCGPにより回復したことから、連続刺激により遊離されたGABAがグルタミン酸神経終末に存在するGABA_B受容体に作用すると、グルタミン酸の遊離を抑制することが分かった。また、NMDA受容体阻害薬の浅層への局所投与は浅層のみでなく中間層のバースト発火も抑制したことから、中間層のバースト発火生成には浅層のバースト発火が必要であることが分かった。以上の結果は、浅層のGABA_B受容体は上丘局所回路でのバースト発火の持続時間を制限し、サッケードを適切に終了させる上で重要な役割を果たす可能性を示している。
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