研究課題
パーキンソン病の病態生理を解明するために、MPTP神経毒誘発性パーキンソン病モデルサルを作製し、大脳基底核の神経活動を記録した。その結果、淡蒼球外節、淡蒼球内節ならびに視床下核において、過度のbeta帯域(13-17Hz)の発振現象を示す神経活動が多数観察された。これらの異常な神経活動はMPTP神経毒投与前においては認められなかったことから、この大脳基底核ニューロンにおけるbeta帯域の発振現象がパーキンソン症状を惹起している可能性が考えられる。モデル動物へのパーキンソン病治療薬であるL-DOPAの投与により、パーキンソン症状の消失と共に、beta帯域の異常発振は減弱した。つぎに、大脳基底核の出力核である淡蒼球内節の異常発振は、視床下核からのグルタミン酸作動性入力により惹起されるものであるという仮説のもと、視床下核にムシモールを注入し視床下核の神経活動を不活化したところ、パーキンソン症状の減弱と共に、淡蒼球内節の発振現象は消失した。また、視床下核の発振現象についてさらに詳細に調べたところ、淡蒼球外節からのGABA作動性入力と大脳皮質からのグルタミン酸作動性入力により視床下核の発振活動が増強されることが明らかとなった。本研究は、パーキンソン病患者に対して視床下核あるいは淡蒼球内節の脳深部刺激療法が奏功する作用メカニズムを考える上で、非常に重要な神経生理学的知見を与えるものであると考えられる。
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European Journal of Neuroscience 27
ページ: 238-253