本研究は独自に保有するメラノーマ自然発症モデルであるRETトランスジェニックマウス(RET-Tg)を利用し、メラノーマの予知、予防のためのバイオマーカーを探索することを目的として研究を行っている。前年度においてメラノーマ発症マウスと同齢のWildtypeそれぞれの血清成分からアルブミンに結合する分子を特異的に抽出し、二次元電気泳動法による比較を行いバイオマーカーの候補スポットを検出、数百分子のなかから複数の差異あるスポットを見出した。当年度においては、腫瘍未発症のトランスジェニックマウス血清および尿と同齢マウスとを、同方法により比較検討を行った。現在まで腫瘍未発症マウスと対照それぞれのアルブミン結合性分子とに明確な差がある分子は特定されなかったが、その理由として腫瘍未発症時と明らかに皮膚表層に腫瘍が認められる間の時期のサンプリングが比較的難しいこと、尿サンプルでは蛋白量が極めて少ないことが考えられた。今後、腫瘍の発症が明らかとなった微小な表層腫瘍が見られた段階のRET-Tgマウスから血清をサンプリングし検討する予定である。一方、悪性腫瘍が発症したマウスとの比較で、検討対象をサイトカイン遺伝子絞ったDNAフォーカスアレイを用いて調べたところ、Chemokine(C-X-Cmotif)ligandの一つに明らかな発現増加が認められた。この分子については大腸がん、乳がん、肺がんで高発現することが知られるが、メラノーマでは確かな報告がなく、有用なバイオマーカー候補として期待される。今後、この分子の発現に対しバリデーションを行い、腫瘍発症時期と発現量との相関を検討したい。
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