小型魚類であるゼブラフィッシュは優れたモデル動物として盛んに用いられているが、近交系がなく、この点が遺伝学を適応する上で大きな弱点となっている。そこで本課題ではゼブラフィッシュの近交系の樹立を目指すと共に、ゼブラフィッシュにおける近交退化の強さを見極めることを目的としている。 近交系は野生型の2系統(Tubingen系統・India系統)から樹立を試みている。当該年度には、Tubingen系統からは9世代目・India系統からは10世代目までの兄妹交配を行い、それぞれ10世代目・11世代目の飼育を開始した。また、コンタミネーションの可能性を排除しつつ、近交系化の進み具合をモニタリングするために用いる遺伝マーカーの選出を行った。近交系化を進めている2系統それぞれの系統内で1)多型が報告されているか、あるいは0世代目にて多型が確認できており、かつ2)1世代目へのアリルの継承が矛盾無く観察された遺伝マーカーを選出した。尚、ゼブラフィッシュの25対の染色体それぞれにつき2個、合計50個の遺伝マーカーを選ぶ予定である。これまでに24対の染色体において2個の遺伝マーカーを選出し終えた。残る1染色体についても、近日中に完了する予定である。 以上、近交系の作出は予定通りに進捗しており、今のところ近交退化は認められない。10世代の兄妹交配でも既に90%程度はホモ接合であることを考えると、ゼブラフィッシュにおける近交退化はさほど強いものではなく、近交系樹立成功は十分に期待できる。
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